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SARS-CoV-2論文 アップデート 2020.06.26 報

【検査】

  1. 血液型でかかりやすいかかりにくいが決まっている。A型はかかりやすく、O型はかかりにくい。

Ellinghaus D, et al.Genomewide Association Study of Severe Covid-19 with Respiratory Failure.N Engl J Med. 2020;10.1056/NEJMoa2020283. doi:10.1056/NEJMoa2020283

  • 呼吸不全を伴った重症化リスクと相関するゲノム領域を同定
  • SLC6A20 (溶質キャリアファミリー6メンバー20)~LZTFL1 (ロイシンジッパー転写因子様タンパク質1)~CCR9 (C-Cケモカイン受容体タイプ9)~FYCO1 (FYVE & コイルドコイルドメインオートファジーアダプター1)~CXCR6 (C-X-Cケモカイン受容体タイプ6)~XCR1 (X-Cケモカイン受容体1) の領域 → rs11385942
  • ABO式血液型領域 → rs657152
  • A型が高リスク・・・他の血液型の45倍 O型が低リスク・・・他の血液型の0.65倍 ← 以前の報告と一致

 

  1. PCR検査はぬぐいとりでは、検体量が少ないと偽陰性がでやすくなる。したがって唾液での検査のほうが精度が高いMancini F, et al.

Laboratory management for SARS-CoV-2 detection: a user-friendly combination of the heat treatment approach and rt-Real-time PCR testing.

Emerg Microbes Infect. 2020;9(1):1393-1396. doi:10.1080/22221751.2020.1775500

  • 鼻咽頭スワブのウイルスRNA抽出の条件検討
  • 温度70°C, 80°C, 90°C, 95°C, 98°C × 時間3, 5, 10, 15分の組み合わせ
  • 対照: QIAamp viral RNA mini kit (Qiagen)
  • ベストな組み合わせは、鼻咽頭スワブ液1:10希釈サンプルで95°C・10分
  • ウイルス量が少ない検体(CT ≥ 35)では偽陰性が生じやすくなる

 

  1. 現在抗体検査はIℊG、Mが使われているが最も反応がよいのはIℊAであり、IℊAを用いたイムノクロマト法の検査キットも登場している。

Padoan A, et al.

IgA-Ab response to spike glycoprotein of SARS-CoV-2 in patients with COVID-19: A longitudinal study.

Clin Chim Acta. 2020;507:164-166. doi:10.1016/j.cca.2020.04.026

  • IgA抗体の経時的変化をIgM抗体と比較
  • IgMよりもレスポンスが速く、発症3週間でピーク、IgMよりも強く長く持続

 

【治療薬】

  1. 英国で実施中の大規模臨床試験”RECOVERY”のプレスリリース ステロイドは新型コロナ治療薬に有効

Low-cost dexamethasone reduces death by up to one third in hospitalised patients with severe respiratory complications of COVID-19

  • ステロイド系抗炎症薬デキサメタゾン治療により、呼吸補助が必要な重症患者の死亡リスクが減少
  • 患者2,104人: デキサメタゾン6 mg × 10日 患者4,321人: 標準治療
  • 要人工呼吸器患者で死亡率が1/3減少、要酸素吸入患者で1/5減少
  • 呼吸補助が必要でない患者には効果はない

 

  1. 新型コロナウイルス重症感染者には間葉系幹細胞が有効との論文が相次いだが、培養上清液に含まれるエクソソームがInal JM.

Decoy ACE2-expressing extracellular vesicles that competitively bind SARS-CoV-2 as a possible COVID-19 therapy.

Clin Sci (Lond). 2020;134(12):1301-1304. doi:10.1042/CS20200623

  • ACE2を表面発現する細胞外小胞を利用してSARS-CoV-2を捕捉し感染を阻害する治療法の提案
  • ACE2を過剰発現させた間葉系幹細胞から調製した細胞外小胞

 

【その他】

  1. 新型コロナウイルスの変異する能力は極めて高い、現在31.500通りの塩基配列あり。生き残る力はほかのウイルスと比較しても極めて高い。

Starr TN, et al.

Deep mutational scanning of SARS-CoV-2 receptor binding domain reveals constraints on folding and ACE2 binding.

bioRxiv 2020.06.17.157982; doi: https://doi.org/10.1101/2020.06.17.157982.

  • SARS-CoV-2スパイクタンパク質のACE2結合領域(201アミノ酸)の各アミノ酸に変異を入れて3804種の変異体を作成し、ACE2との親和性を解析
  • ほとんどの変異がACE2との結合を弱めるので、ウイルスにとって有害無益の変異
  • 結合力が同等か増加させる変異も相当数ある
  • これまでに患者から分離され登録されてきた受容体結合領域の塩基配列31,570個では、全てがニュートラルな変異かACE2との結合力を低下させる変異(=病原性が変わらないか弱める変異)

→ これまでに自然発生した変異には、ACE2との結合力を増加させるような変異(病原性を高める変異)はない