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SARS-CoV-2論文 アップデート 2020.07.21 報

【検査】

  1. Tré-Hardy M, et al.
    Analytical and clinical validation of an ELISA for specific SARS-CoV-2 IgG, IgA and IgM antibodies.
    J Med Virol. 2020;10.1002/jmv.26303. doi:10.1002/jmv.26303
     ヌクレオカプシドタンパク質(Nタンパク質)に対する抗体を検出するELISAキットのパフォーマンステスト
     NovaLisa® SARS-CoV-2 IgG, IgA, and IgM test (NovaTec®) : 各抗体を別々に定量
    Platelia® SARS-CoV-2 Total Ab test (Bio-Rad®): 総抗体量 (IgM, IgA, IgG) を定量
     PCR陽性後2週間の時点
    NovaLisa® test:
    IgG 感度94.9% 特異度96.2%, IgA 感度89.7% 特異度98.7%, IgM 感度48.7% 特異度98.7%
    Platelia®: 感度94.9% 特異度97.4%

【ワクチン】

  1. Folegatti PM, et al.
    Safety and immunogenicity of the ChAdOx1 nCoV-19 vaccine against SARS-CoV-2: a preliminary report of a phase 1/2, single-blind, randomised controlled trial
    Lancet. Published Online July 20, 2020. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)31604-4
     アストラゼネカ+オックスフォード大のDNAワクチンChAdOx1 nCoV-19(SARS-CoV-2スパイクタンパク質を発現するチンパンジーアデノウイルスベクターワクチン)のP1/2臨床試験結果の中間報告
     SARS-CoV-2感染・COVID-19様症状歴のない18–55才の健常人1077人
     投与群543人: ChAdOx1 nCoV-19 5×10¹⁰個のウイルス粒子 筋注1回
    うち10人は2回接種群(1回目の28日後にブースター接種)
    コントロール群534人: 髄膜炎菌結合型ワクチン (MenACWY)
     痛み・熱感・寒気・筋肉痛・頭痛・不快感など局所・全身の反応は投与群でより顕著、多くはパラセタモールで軽減
    その他の有害事象はなし
     スパイクタンパク質に特異的なT細胞応答は接種後14日でピーク
     抗スパイクタンパク質IgGは接種後28日までに上昇 (2回接種群はさらに上昇)
     91–100%でSARS-CoV-2に対する中和抗体を検出
     最終のP3臨床試験を実施中
  2. Zhu FC, et al.
    Immunogenicity and safety of a recombinant adenovirus type-5-vectored COVID-19 vaccine in healthy adults aged 18 years or older: a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 2 trial
    Lancet. Published Online July 20, 2020. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)31605-6
     中国カンシノ・バイオロジクス+軍事科学院のグループのDNAワクチン候補Ad5-nCoV(SARS-CoV-2スパイクタンパク質を発現する5型ヒトアデノウイルスベクターワクチン)のP2臨床試験結果
     SARS-CoV-2未感染の18才以上の健常人508人
     投与群: 1×10¹¹個のウイルス粒子投与群253人、5×10¹⁰個のウイルス粒子投与群129人 筋注1回
    プラセボ群: 126人
     接種後28日で抗体量がピーク、96–97%の被検者で抗スパイクタンパク質抗体が陽転
     SARS-CoV-2に対する中和抗体を誘導
     72–74%の被検者で疲労感・発熱・頭痛・接種部分の痛みなどの軽微な有害事象 深刻な有害事象はなし
     5×10¹⁰個のウイルス粒子であれば、安全性と有効性を両立できる
     接種を受けた人が過去の感染でアデノウイルスに対する免疫を保有している場合、効果が低下する可能性がある  【治療薬】
  3. Zost SJ, et al.
    Potently neutralizing and protective human antibodies against SARS-CoV-2.
    Nature. 2020;10.1038/s41586-020-2548-6. doi:10.1038/s41586-020-2548-6
     強い中和活性を持ち、スパイクタンパク質がACE2へ結合するのをブロックするヒトモノクローナル抗体を同定
     中和活性の強い二種類のモノクローナル抗体COV2-2196・COV2-2130は結合部位が重複しないので同時にスパイクタンパク質に結合し、協調的にウイルスを中和
     COV2-2196・COV2-2130をマウスSARS-CoV-2感染モデル投与
    → 体重減の阻止、ウイルス量の減少、肺の炎症を緩和
     ACE2ブロッキング活性の強いモノクローナル抗体COV2-2196・COV2-2381をアカゲザルに投与
    → SARS-CoV-2感染を抑制

英国で実施中の大規模臨床試験”RECOVERY”のプレスリリース
Low-cost dexamethasone reduces death by up to one third in hospitalised patients with severe respiratory complications of COVID-19
 ステロイド系抗炎症薬デキサメタゾンの臨床試験
 治療により、呼吸補助が必要な重症患者の死亡リスクが減少
 要人工呼吸器患者で死亡率が1/3減少、要酸素吸入患者で1/5減少
 呼吸補助が必要でない患者には効果はない
   ↓

  1. RECOVERY Collaborative Group, Horby P, Lim WS, et al.
    Dexamethasone in Hospitalized Patients with Covid-19 – Preliminary Report.
    N Engl J Med. 2020;10.1056/NEJMoa2021436. doi:10.1056/NEJMoa2021436
     デキサメタゾン投与群: 患者2,104人, 6 mg × 10日 vs. 標準治療群: 患者4,321人
     治療開始後28日間の死亡率: デキサメタゾン群22.9% vs. 標準治療群25.7%
     要人工呼吸器患者: デキサメタゾン群29.3% vs. 標準治療群41.4%
     要酸素吸入患者: デキサメタゾン群23.3% vs. 標準治療群26.2%
     呼吸補助を必要としていない患者: デキサメタゾン群17.8% vs. 標準治療群14.0%
     入院患者へのデキサメタゾン投与は死亡率を低下させるが、その効果は患者が受けている呼吸補助のレベルによって大きく異なる

【その他】

  1. Le Bert N, et al.
    SARS-CoV-2-specific T cell immunity in cases of COVID-19 and SARS, and uninfected controls.
    Nature. 2020;10.1038/s41586-020-2550-z. doi:10.1038/s41586-020-2550-z
     ヌクレオカプシドタンパク質(Nタンパク質)、NSP-7、NSP13に対するT細胞応答を解析
     回復患者36人全員にNタンパク質に応答するヘルパーT細胞・細胞傷害性T細胞が存在
     SARS回復患者23人にSARS-CoVのNタンパク質に応答する記憶T細胞が存在し、SARS-CoV-2のNタンパク質に対して強い交差反応を示す(2003年の流行から17年後の現在でも)
     SARS・COVID-19の感染歴や患者との接触歴がない37人でも、SARS-CoV-2に応答するT細胞を検出
     T細胞が認識するNタンパク質の領域はベータコロナウイルス属で保存されている領域
    → 過去のベータコロナウイルス属の感染がNタンパク質に対する長期間持続するT細胞免疫を誘導、それがSARS-CoV-2に対して交差反応することにより感染防御に貢献
  2. Crane-Godreau MA, et al.
    Vitamin D Deficiency and Air Pollution Exacerbate COVID-19 Through Suppression of Antiviral Peptide LL37.
    Front Public Health. 2020;8:232. doi:10.3389/fpubh.2020.00232
     ビタミンDはカテリシジン遺伝子の転写を活性化する カテリシジンは切断されて生体防御ペプチドLL37をつくる
     LL37は好中球やマクロファージが産生し、エンベロープウイルスを含む広範囲の微生物に対して活性を示す
     LL37はIL-6・TNF-aなどの炎症性サイトカイン産生を低下させる
     ビタミンD欠乏はLL37を減少させ、SARS-CoV-2感染リスクを増加させるのかもしれない
  3. Inagaki H, Saito A, Sugiyama H, Okabayashi T, Fujimoto S.
    Rapid inactivation of SARS-CoV-2 with Deep-UV LED irradiation.
    Emerg Microbes Infect. 2020;1-8. doi:10.1080/22221751.2020.1796529
     波長280±5 nmの遠紫外発光ダイオード (DUV-LED) 照射により、患者由来SARS-CoV-2が迅速に不活化
     1秒照射で87.4%、10秒照射で99.9%を不活化
  4. Mercatelli D, et al.
    Geographic and Genomic Distribution of SARS-CoV-2 Mutations.
    Preprints 2020, 2020040529
     SARS-CoV-2のゲノムRNAの塩基配列48,635種類の比較 (GISAID consortiumから入手可)
     SARS-CoV-2の全変異をオリジナルのWuhan genome NC_045512.2を比較 → 平均7.23個の変異
     変異の種類を詳細に解析
    → 大陸別・国別の変異の頻度・種類、頻度の高い変異トップ20、大陸別cladeの割合、など

現時点での
SARS-CoV-2の系統(clade)

6系統の系統図

各国の6系統の割合

鮮明な図とアニメーション → https://www.gisaid.org/epiflu-applications/next-hcov-19-app/

欧州に広がる新型コロナウイルスの66%がG・GH・GR系統になっており、世界全体で見ても74%まで拡大
日本でも、4月以降に発生した新型コロナウイルスは主にG系統
韓国での現在の流行はGH系統
日本でも同様に、G・GH・GR系統の欧州株が第2波の原因になっているとみられる