COVID-19論文 アップデート 2021.01.28 報

【ワクチン】

1. Rathnasinghe R, et al. The N501Y mutation in SARS-CoV-2 spike leads to morbidity in obese and aged mice and is neutralized by convalescent and post-vaccination human sera. Preprint. medRxiv. 2021;2021.01.19.21249592.
   • 回復期患者血清 (34人) およびファイザー/バイオンテック製ワクチン接種者 (6人) の血清は、従来株と同等の効率でN501Y変異株を中和できる

2. Wang Z, et al. mRNA vaccine-elicited antibodies to SARS-CoV-2 and circulating variants. Preprint. bioRxiv. 2021;2021.01.15.426911. doi:10.1101/2021.01.15.426911
   • モデルナ製ワクチンまたはファイザー/バイオンテック製ワクチン接種者の血漿は、E484K変異株、N501Y変異株、またはK417N/E484K/N501Y変異株に対する中和活性がわずかではあるが有意に減少
   • テストされた最も強力な17種類のモノクローナル抗体のうち14種類で、K417N、E484KまたはN501Y変異のいずれかによって中和活性が減少または喪失

3. Wibmer CK, et al. SARS-CoV-2 501Y.V2 escapes neutralization by South African COVID-19 donor plasma. Preprint. bioRxiv. 2021;2021.01.18.427166. doi:10.1101/2021.01.18.427166　
   • 501Y.V2（南アフリカ変異株）が治療用モノクローナル抗体から完全にエスケープする　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　このエスケープには、K417N変異とE484K変異が関与
   • 501Y.V2は、COVID-19回復期患者血漿中の中和抗体からエスケープする
   • 変異株による再感染の可能性？　現行のスパイクベースのワクチンの有効性の低下？　　　　　

4. Wu K, et al. mRNA-1273 vaccine induces neutralizing antibodies against spike mutants from global SARS-CoV-2 variants. Preprint. bioRxiv. 2021;2021.01.25.427948. doi:10.1101/2021.01.25.427948　モデルナ社によるワクチンチェック
   • モデルナ製ワクチン接種者またはワクチン投与サルの血清の中和能力を評価
   • B.1.1.7系列（英国変異株）に対する中和活性への有意な影響はない
   • B.1.351系列（南アフリカ変異株）に対して中和活性は減少しているが依然として有意である

5. Ella R, et al. Safety and immunogenicity of an inactivated SARS-CoV-2 vaccine, BBV152: a double-blind, randomised, phase 1 trial. Lancet Infect Dis. 2021;S1473-3099(20)30942-7. doi:10.1016/S1473-3099(20)30942-7
   • 印バーラト・バイオテック社の純国産不活化ワクチンBBV152 (COVAXIN) のP1試験
   • BBV152　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　抗原: 不活化全粒子SARS-CoV-2　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　TLR7/8アゴニスト: イミダゾキノリン　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　アジュバント: Algel (水酸化アルミニウムベースのアジュバント)
   • P1試験　　18〜55歳の健康な成人375人, 14日おきに2回の筋肉内投与　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　安全性: 被検者の数%に軽度～中等度の接種部位の痛み、頭痛、倦怠感、発熱、嘔吐および悪心　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　免疫原性: 抗体陽転率: 82・8～91・9%　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　※ 1/22バーラト・バイオテック社プレスリリース: P3試験で約13000人に2回目の接種を実施　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　※ 治験終了に先駆けてインド国内で緊急承認

6. Sapkal GN, et al. Neutralization of UK-variant VUI-202012/01 with COVAXIN vaccinated human serum. Preprint. bioRxiv 2021.01.26.426986; doi: https://doi.org/10.1101/2021.01.26.426986
   • BBV152/COVAXIN接種者 (26人) の血清は、英国変異株に対して従来株と同等の中和活性を示す

7. Tan TK, et al. A COVID-19 vaccine candidate using SpyCatcher multimerization of the SARS-CoV-2 spike protein receptor-binding domain induces potent neutralising antibody responses. Nat Commun. 2021;12(1):542. doi:10.1038/s41467-020-20654-7
   • SARS-CoV-2に対するタンパク質ナノ粒子ワクチン
   • 合成ウイルス様粒子SpyCatcher003-mi3（下図左）の表面にスパイクタンパク質受容体結合領域（RBD, 下図中央の黄色部分）を配列させたもの（下図右）をワクチンとして接種する　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
   • 回復期のヒト血清よりも強力な中和抗体反応をマウスとブタに誘発
   • 熱安定性があり、免疫原性を失うことなく凍結乾燥できる

8. Furuyama W, et al. Rapid protection from COVID-19 in nonhuman primates vaccinated intramuscularly but not intranasally with a single dose of a recombinant vaccine. Preprint. bioRxiv. 2021;2021.01.19.426885. doi:10.1101/2021.01.19.426885
   • 単回投与で速効性の水疱性口内炎ウイルスベクターCOVID-19ワクチンVSV-SARS2-EBOV
   • 認可済みのエボラウイルスワクチンrVSV-ZEBOVに由来
   • アカゲザルへの筋肉内単回接種で、10日以内に感染予防効果、肺炎の発症を阻止

【治療薬】

9. White KM, et al. Plitidepsin has potent preclinical efficacy against SARS-CoV-2 by targeting the host protein eEF1A. Science. 2021;eabf4058. doi:10.1126/science.abf4058
   • プリチデプシン（アプリジン）: マンジュウボヤ属の一種Aplidium albicansから抽出された化合物
   • in vitroでレムデシビルの27.5倍強い抗SARS-CoV-2活性を示す
   • 抗SARS-CoV-2活性は、宿主のタンパク質翻訳伸長因子eEF1Aの阻害による　　　　　　　（ウイルスは宿主のタンパク質翻訳システムを乗っ取って自己複製に必要なタンパク質を合成する）
   • マウスのSARS-CoV-2感染モデルで、肺でのウイルス複製を有意に抑制
   • COVID-19の有望な治療薬候補である

10. Starr TN, et al. Prospective mapping of viral mutations that escape antibodies used to treat COVID-19. Science. 2021;eabf9302. doi:10.1126/science.abf9302
    • リジェネロン社の抗体医薬REGN-COV2 (異なる部位を認識する2種類の中和抗体casirivimabおよびimdevimabのカクテル) とイーライリリー社の抗体医薬LY-CoV016 (モノクローナル中和抗体Etesevimab) の結合に対して、スパイクタンパク質の受容体結合ドメインの変異がどの程度影響するかをマッピング
    • REGN-COV2とLY-CoV016を完全に回避するアミノ酸変異を同定
    • 蔓延中のSARS-CoV-2株に抗体を免れる変異がすでに存在している

11. Zhang F, et al. Inhibition of drug-metabolizing enzymes by Qingfei Paidu decoction: implication of herb-drug interactions in COVID-19 pharmacotherapy. Food Chem Toxicol. 2021;149:111998. doi:10.1016/j.fct.2021.111998
    • シトクロムP450 (CYP): 肝臓で解毒・薬物代謝を行う酵素, ヒトには57種類のシトクロムP450がある 清肺排毒湯のヒトCYPに対する阻害能を解析 → CYP1A、2A6、2C8、2C9、2C19、2D6、2E1、3Aを阻害
    • 清肺排毒湯とロピナビルをラットに同時投与すると、ロピナビル（CYP3Aの基質となる）の半減期を1.40倍延長し、ロピナビルの治療効果を2.04倍増加させる
    • 清肺排毒湯中のキジツ (枳実) CYP3A活性の有意な阻害を起こす
    • CYP3Aの基質となる薬剤と清肺排毒湯を同時に投与することで、薬剤の効果を増強・延長できるかもしれない

【検査】

【その他】

12. Iacobucci G. Covid-19: New UK variant may be linked to increased death rate, early data indicate. BMJ. 2021;372:n230. doi:10.1136/bmj.n230
    • 英国変異株の死亡リスク増加？　
    • 診断から28日以内の死亡リスク: 従来株と比較して1.35倍
    • 致命率 (= 死亡数/罹患数): 従来株と比較して1.36倍, 1.29倍, 1.91倍, 1.65倍
    • 英国での初期データの解析にすぎず決定的ではない

13. Salaris C, et al. Protective Effects of Lactoferrin against SARS-CoV-2 Infection In Vitro. Nutrients. 2021;13(2):328. doi:10.3390/nu13020328
    • ラクトフェリンの抗SARS-CoV-2効果を解析
    • 培養細胞で抗ウイルス免疫に関連する遺伝子 (IFNA1, IFNB1, TLR3, TLR7, IRF3, IRF7, MAVS (IPS-1)) の発現を誘導
    • 培養細胞でSARS-CoV-2の感染と複製を部分的に阻害

14. Yoshiyama T, et al. Prevalence of SARS-CoV-2-Specific Antibodies, Japan, June 2020. Emerg Infect Dis. 2021;27(2):628-631. doi:10.3201/eid2702.204088　結核予防会結核研究所
    • 2020. 6. 1–7, 東京都・大阪府・宮城県の成人13547人を登録、そのうち7950人を検査
    • 市販の抗体検査2種 (アボット社のSARS-CoV-2 IgG assay, ロシュ社Elecsys Anti-SARS-CoV-2 immunoassay) を組み合わせて実施
    • 両方とも陽性8人 (0.101%) → 全例が中和抗体アッセイでも陽性　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　片方のみ陽性30人