【検査】
- Wajnberg A, et al. Robust neutralizing antibodies to SARS-CoV-2 infection persist for months. Science. 2020;eabd7728. doi:10.1126/science.abd7728
- ニューヨークの感染者30,082人の解析
- 軽症~中等症患者の圧倒的多数はSARS-CoV-2スパイクタンパク質に対するIgG抗体をもつ
- IgG抗体の活性は少なくとも約5か月間は比較的安定
- スパイクタンパク質に結合する活性はSARS-CoV-2中和活性と相関する
→ IgG抗体陽性者の90%以上はウイルス中和が可能
【治療薬】
- Yepes-Pérez AF, et al. Uncaria tomentosa (cat’s claw): a promising herbal medicine against SARS-CoV-2/ACE-2 junction and SARS-CoV-2 spike protein based on molecular modeling. J Biomol Struct Dyn. 2020;1-17. doi:10.1080/07391102.2020.1837676
- Uncaria tomentosa (Cat’s claw) の主要成分26化合物の抗ウイルス活性を評価
- 数種類の成分がACE2-スパイクタンパク質の結合部分と相互作用(in silico解析)
10/16アップデートより
Yepes-Pérez AF, et al. Investigating Potential Inhibitory Effect of Uncaria tomentosa (Cat’s Claw) against the Main Protease 3CLpro of SARS-CoV-2 by Molecular Modeling. Evid Based Complement Alternat Med. doi: 10.1155/2020/4932572.
- Uncaria tomentosa (Cat’s claw) がメインプロテアーゼを阻害(in silico解析)
- キャッツクロー: ペルーの標高400~800mのアマゾン奥地に自生する蔓性植物 市販サプリあり
- Mrityunjaya M, et al. Immune-Boosting, Antioxidant and Anti-inflammatory Food Supplements Targeting Pathogenesis of COVID-19. Front Immunol. 2020;11:570122. doi:10.3389/fimmu.2020.570122
- COVID-19に効果(免疫調節・抗酸化・抗炎症)のある可能性がある食品・サプリメントの総説
- 亜鉛、セレニム、ビタミンD、ビタミンC
クルクミン(ウコンなどに含まれる黄色のポリフェノール化合物)
シンナムアルデヒド(シナモンなどのニッケイ属の樹皮に含まれる芳香族アルデヒド)
アリシン(ニンニク由来の化合物)
ピペリン(コショウ科の植物、特に黒コショウに含まれる辛味成分)
クェルセチン(柑橘類、タマネギやソバをはじめ多くの植物に含まれる黄色い色素)
ラクトフェリン(母乳・涙・汗・唾液などの外分泌液中に含まれる鉄結合性の糖タンパク質)
- Heller RA, et al. Prediction of survival odds in COVID-19 by zinc, age and selenoprotein P as composite biomarker. Redox Biol. 2020;38:101764. doi:10.1016/j.redox.2020.101764
- COVID-19患者はZnが欠乏
Seを含むタンパク質セレノプロテインPもCOVID-19患者で減少 ・・・という仮説を検証
- 血清Zn濃度: 患者 < 健常者 (717.4 ± 246.2 vs 975.7 ± 294.0 μg/L, P < 0.0001).
- Zn欠乏症 (< 638.7 μg/L): 死亡患者73.5% (25/34) > 生存患者40.9% (56/137)
- 血清Zn濃度 < 638.7 μg/L かつ 血清セレノプロテインP濃度 < 2.56 mg/L
健常者0.15% vs 生存患者19.7% vs 死亡患者50.0%
- 血清Zn濃度・血清セレノプロテインP濃度・年齢で生存・死亡を94.42%の精度で予測できる
- サプリメントによりSe・Znの減少・欠乏を是正することが回復をサポートする
※ セレノプロテインP: 1分子内に10個のSe原子を持つ血漿タンパク質で強力な抗酸化作用を持つ
引き続き、抗COVID-19漢方薬のネットワーク薬理学に関する論文が続いている
・・・ 病気の原因として1種類のタンパク質(遺伝子)に着目、それに選択的に作用する1種類の化合物を開発
・・・ 複数のタンパク質を標的にすることにより効果的に疾患を制御しようという概念
↑ネットワーク薬理学: 生体内のタンパク質などが作るネットワークに着目し、効果的で安全な標的やその組み合わせを見出そうという試み
- Zhuang Z, et al. Exploring the Potential Mechanism of Shufeng Jiedu Capsule for Treating COVID-19 by Comprehensive Network Pharmacological Approaches and Molecular Docking Validation. Comb Chem High Throughput Screen. 2020;10.2174/1386207323999201029122301. doi:10.2174/1386207323999201029122301
- 疏風解毒カプセルのネットワーク薬理学
- 標的遺伝子339種類、ハブとなる10種類の遺伝子
- 有効成分214種類、そのうち主要な有効成分は5種類
β-シトステロール: コレステロールに類似した化学構造をもつ植物ステロールの一種で、抗炎症作用がある
ルテオリン: 抗酸化作用・免疫調節作用があり、アーユルヴェーダの中で最も優れた強壮ハーブであるミロバラン(ハリタキ)などに含まれる
ケンペロール: 抗酸化作用・抗炎症作用があり、茶やブロッコリーに含まれる
クェルセチン
スティグマステロール: 植物ステロール
- Xia QD, et al. Network pharmacology and molecular docking analyses on Lianhua Qingwen capsule indicate Akt1 is a potential target to treat and prevent COVID-19. Cell Prolif. 2020;e12949. doi:10.1111/cpr.12949
- 連花清瘟カプセルのネットワーク薬理学
- 標的遺伝子65種類、免疫応答系・アポトーシス系・ウイルス感染系
- 主要な有効成分6種類
β-カロテン: 緑黄色野菜に豊富に存在する赤橙色色素でビタミンAの前駆体
ケンペロール
ルテオリン
ナリンゲニン: グレープフルーツ・オレンジ・トマトなどに含有されているフラボノイド(ポリフェノールの一種)で、抗C型肝炎ウイルス効果をもつ
クェルセチン
オウゴニン: コガネバナなどに含まれるフラボノイドで、黄芩や小柴胡湯の有効成分
【ワクチン】
- Guebre-Xabier M, et al. NVX-CoV2373 vaccine protects cynomolgus macaque upper and lower airways against SARS-CoV-2 challenge. Vaccine. 2020;S0264-410X(20)31373-6. doi:10.1016/j.vaccine.2020.10.064
- 米国Novavax社のナノ粒子ワクチンNVX-CoV2373
ワクチンとして有効性の高い配列に改変・抗原部位が露出した状態で多量体を形成するよう設計したSARS-CoV-2スパイクタンパク質を精製したもの+サポニン・ベースの免疫増強アジュバントMatrix-M
- サルを用いたプレクリニカル試験の結果
- カニクイザルにNVX-CoV2373を接種
→ 抗スパイクタンパク質中和抗体を誘導 ACE2への結合をブロックし感染を阻害
- 鼻腔・気管へのSARS-CoV-2投与しても上下気道感染から保護し肺症状の発症を抑制
- P1/2試験はすでに終了、9/24からは最大1万人を対象としたP3試験を英国で開始
【その他】
- Aran D, et al. Prior Presumed Coronavirus Infection Reduces COVID-19 Risk: A Cohort Study. J Infect. 2020;S0163-4453(20)30683-6. doi:10.1016/j.jinf.2020.10.023
- PCR検査を受けた869,236人の健康保険診療記録を解析
- 前年に急性鼻炎・気管支炎・咽頭炎などの風邪症状があった18才以上の人は、PCR陽性リスクが0.76倍低い
- 風邪コロナウイルス感染による交差反応とPCR陽性リスク低下とを直ちに関連づけることはできないが、一つの説明ではある
- Pellegrini L, et al. SARS-CoV-2 Infects the Brain Choroid Plexus and Disrupts the Blood-CSF Barrier in Human Brain Organoids. Cell Stem Cell. 2020;S1934-5909(20)30495-1. doi:10.1016/j.stem.2020.10.001
- 一部のCOVID-19患者には中枢神経症状が合併する
味覚障害、嗅覚障害、めまい、頭痛、脳卒中、脳症、脳炎など
- 脈絡叢細胞にACE2が発現、神経細胞などには発現していない
- SARS-CoV-2は脈絡叢上皮細胞に感染するが、神経細胞やグリア細胞にはほとんど感染しない
- SARS-CoV-2の感染は脈絡叢上皮にダメージを与え、血液脳脊髄液関門を破壊する
※ 脈絡叢: 脳室に脳脊髄液を分泌する組織。脈絡叢上皮細胞は毛細血管の血管内皮細胞とともに血液脳脊髄液関門を形成し、病原体・免疫細胞・サイトカインなどが脳脊髄液や脳内に侵入するのを防ぐバリアとして働いている
(右上図 上から脳組織(濃い青色)、脳室の脳脊髄液(水色、CSF)、脈絡叢(ChP)、血管)
- Huang N, et al. Integrated Single-Cell Atlases Reveal an Oral SARS-CoV-2 Infection and Transmission Axis. Preprint. medRxiv. 2020;2020.10.26.20219089. doi:10.1101/2020.10.26.20219089 プレプリント
- 小唾液腺(口腔粘膜やのどの粘膜に存在し、唾液腺組織から口腔内に直接唾液を分泌)と歯肉組織で1細胞RNAシーケンシング
- 小唾液腺・口腔粘膜の基底層上細胞などの上皮にSARS-CoV-2の受容体ACE2・TMPRSS2が発現
- 患者剖検組織で唾液腺と口腔粘膜への感染を確認
- 感染者唾液中にACE2を発現する上皮細胞とSARS-CoV-2 RNAを確認
- 回復中患者唾液中に抗SARS-CoV-2抗体を確認
- 口腔はSARS-CoV-2感染部位であり、唾液はウイルス伝播に関与する