【検査】
【治療薬】
- D’Alessio A, et al. Low-dose ruxolitinib plus steroid in severe SARS-CoV-2 pneumonia. Leukemia. 2020;1-4. doi:10.1038/s41375-020-01087-z
- ルキソリチニブの非ランダム化比較試験
- 治療開始時に人工呼吸器を必要としていない重症患者
介入群32人: ルキソリチニブ+メチルプレドニゾロン
対照群43人: メチルプレドニゾロン
- 生存・回復率: 89.1% vs 57.1% (p = 0.0034)
- 炎症反応の低下 (解熱・CRP30%以上減): 87% vs 23% (p = 0.0001)
- CRPレベル (中央値): 14.6→1.33 vs 11.53→12 (p = 0.0001)
※ ルキソリチニブ: 骨髄線維症、真性多血症の治療薬 ヤヌスキナーゼ (JAK) 阻害剤
※ 他にもルキソリチニブ+デキサメタゾン治療の症例報告あり
- Wang S, et al. Characterization of neutralizing antibody with prophylactic and therapeutic efficacy against SARS-CoV-2 in rhesus monkeys. Nat Commun. 2020;11(1):5752. doi:10.1038/s41467-020-19568-1
- Mabwell (Shanghai) Bioscience社のモノクローナル抗体医薬MW05/LALA
スパイクタンパク質とACE2の結合をブロックして感染を阻害する中和抗体
抗体のFc領域に変異を入れることでADEが起こる可能性を除去
- Monk PD, et al. Safety and efficacy of inhaled nebulised interferon beta-1a (SNG001) for treatment of SARS-CoV-2 infection: a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 2 trial. Lancet Respir Med. 2020;S2213-2600(20)30511-7. doi:10.1016/S2213-2600(20)30511-7
- 噴霧・吸入型IFN-β1a (SNG001) のP2試験
- COVID-19入院患者98人 → SNG001投与群: 48人, プラセボ群: 50人
- SNG001投与群の方がOSCIスコアの改善が有意に大きい
- 治療期間中にOSCIスコア1 (活動の制限なし) まで改善する割合が有意に高い
- 死亡はSNG001投与群0人, プラセボ群3人
- Shi N, et al. Association between early treatment with Qingfei Paidu decoction and favorable clinical outcomes in patients with COVID-19: a retrospective multicenter cohort study. Pharmacol Res. 2020;105290. doi:10.1016/j.phrs.2020.105290
- 清肺排毒湯の治療効果の他施設共同後ろ向き研究
- 54病院の患者782人 → 発症から清肺排毒湯治療開始までの期間により4グループに分割
① 発症1週間未満で治療開始 ② 発症1~2週間で治療開始
③ 発症2~3週間で治療開始 ④ 発症3週間以降に治療開始
- ④に比べて早期治療開始群①②③では回復の可能性が高い ①3.81倍 ②2.63倍 ③1.92倍
- ④に比べて早期治療開始群①②③ではウイルス消失 (PCR陰転) までの期間が短い ①12日 ②12日 ③13日 ④17日(中央値)
- ④に比べて早期治療開始群①②③では入院期間が短い ①14日 ②15日 ③15日 ④18日(中央値)
- ④に比べて早期治療開始群①②③では病期 (発症から退院まで) が短い ①18日 ②21日 ③24日 ④34日(中央値)
- 発症後できるだけ早期に清肺排毒湯治療を開始すると、良好な臨床転帰につながる
- 他施設共同前向きRCTが必要
- Zhang Y, et al. Herbal plants coordinate COVID-19 in multiple dimensions – An insight analysis for clinically applied remedies. Int J Med Sci. 2020;17(18):3125-3145.
- 中国の生薬210種類から処方されている漢方185種類のネットワーク薬理学
- 最も一般的に使用されている生薬10種類のうち8種類は、抗SARS-CoV-2作用の可能性
- 最も一般的に使用されている生薬5種類に含まれる化合物17種類は、スパイクタンパク質およびメインプロテアーゼと結合することにより、直接的な抗SARS-CoV-2活性をもつ可能性がある
- 最有力候補は、山銀花 (Shan Yin Hua, 乾燥スイカズラ花・花芽) の主要有効成分であるマドレセルビンB
- 作用メカニズムは多角的: 免疫調節 (Th2, PPAR, IL10), 急性炎症抑制 (IL-6, IL-1α/β, TNF, COX2/1), 抗酸化 (CAT, SOD1)
- Niu W, et al. Network Pharmacology Analysis to Identify Phytochemicals in Traditional Chinese Medicines That May Regulate ACE2 for the Treatment of COVID-19. Evid Based Complement Alternat Med. 2020;2020:7493281. doi:10.1155/2020/7493281
- “Three formulas and three medicines”
= 金花清感颗粒、连花清瘟胶囊/颗粒、血必净注射液、清肺排毒汤、化湿败毒方、宣肺败毒颗粒
のネットワーク薬理学
- これらに含まれる全化合物の中から、ACE2遺伝子の転写因子 (HNF4A, PPARG) の発現を下げる活性、ACE2遺伝子に対するmiRNAs (hsa-miR-2113, hsa-miR-421) の発現を上げる活性をもつものをスクリーニング
↓
共通性が高い成分
- クェルセチン: 全6種に含まれる
- グラブリジン: 甘草の根抽出物に含まれる。血必净を除く5種に含まれる。
- 没食子酸: 没食子(ブナ・カシワの虫こぶ)、五倍子(ヌルデの虫こぶ)、茶葉など、多くの植物に含まれる。金花清感・连花清瘟以外の4種に含まれる。
共通性が低い成分
- ゲニステイン: ソラマメ、クズ、コーヒーなどに含まれる。清肺排毒湯のみに含まれる。
- クリソエリオール: ミロバラン (ハリタキ) の有効成分ルテオリンの誘導体。金花清感・连花清瘟に含まれる.
- テクトリゲニン: クズ、ヒオウギ、カンザキアヤメなどに含まれる。清肺排毒湯のみに含まれる。
清肺排毒湯は上記6成分中5成分を含む。他は2~3成分
- あとはネットワーク薬理学の常法通り標的遺伝子、その機能、シグナル伝達経路
- Pan B, et al. Chinese herbal compounds against SARS-CoV-2: puerarin and quercetin impair the binding of viral S-protein to ACE2 receptor. Comput Struct Biotechnol J. 2020;10.1016/j.csbj.2020.11.010. doi:10.1016/j.csbj.2020.11.010
- Traditional Chinese Medicine Systems Pharmacology Database and Analysis Platform (TCMSP) を用いてACE2との結合活性をもつ漢方薬成分を同定
- プエラリン: クズ属植物、特にクズの根に多く含まれているイソフラボン
- クェルセチン
- ケンペロール
- Huang S, et al. Baicalein inhibits SARS-CoV-2/VSV replication with interfering mitochondrial oxidative phosphorylation in a mPTP dependent manner. Signal Transduct Target Ther. 2020;5(1):266. doi:10.1038/s41392-020-00353-x
- SARS-CoV-2はミトコンドリアの代謝を自らの増殖に適したように変化させる
ミトコンドリアの酸化的リン酸化を抑制するとウイルスの増殖が抑制される
- バイカレインはミトコンドリアの酸化的リン酸化を阻害してウイルスの増殖を抑制する
- バイカレイン: 漢方にも広く用いられているコガネバナの有効成分で抗炎症薬作用を持つ
- Kanjanasirirat P, et al. High-content screening of Thai medicinal plants reveals Boesenbergia rotunda extract and its component Panduratin A as anti-SARS-CoV-2 agents. Sci Rep. 2020;10(1):19963. doi:10.1038/s41598-020-77003-3
- タイの天然物122種類をスクリーニングし、オオバンガジュツ (中国~東南アジアの薬用・料理用ハーブ) 抽出物の成分パンデュラチンAが抗SARS-CoV-2活性をもつことを発見
- in vitro (Vero細胞、ヒト気道上皮細胞) でSARS-CoV-2の感染・増殖を抑制
- Feng Y, et al. Safety and feasibility of umbilical cord mesenchymal stem cells in patients with COVID-19 pneumonia: A pilot study. Cell Prolif. 2020;e12947. doi:10.1111/cpr.12947
- 少数サンプル、対照なしのパイロット試験
- 重症・重篤患者16人、標準治療の後に臍帯由来間葉系幹細胞 (Jilin Tuohua Biotechnology社製) 静注4回
- oxygenation index (動脈血酸素分圧/吸入気酸素濃度) が移植後に改善
- 移植した患者の死亡率 6.25% 移植しない同程度重症度患者の死亡率45.4%.
- 胸部CT所見 (すりガラス状陰影) が移植後に改善
- リンパ球数・リンパ球サブセット (CD4+ T細胞, CD8+ T細胞, NK細胞) 数が移植後に回復
【ワクチン】
- 米ファイザー/独バイオンテックのmRNAワクチンBNT162b2の追加情報
約44000人のP3臨床試験データの最終分析で、95%の確率で有効性
被験者のうち170人が感染 → ワクチン接種群8人、プラセボ群162人 → 有効率154/162 = 95%
重症患者10人 → ワクチン接種群1人、プラセボ群9人 重症化も防ぐ?
65歳以上の高齢者でも94%の有効性
有害事象は2回目接種後の強い疲労感 (3.7%) 程度
11月中にFDAに緊急使用承認を申請
【その他】
- Chen Y, et al. Quick COVID-19 Healers Sustain Anti-SARS-CoV-2 Antibody Production. Cell. 2020;S0092-8674(20)31458-6. doi:10.1016/j.cell.2020.10.051
- 軽症患者76人でSARS-CoV-2に対するIgG抗体の動態を長期的(約100日間)に追跡
→ 回復スピードと抗体の持続性との関連を発見
- IgG抗体の持続時間には著しい個人差がある
- ウイルス特異的IgG抗体はほとんどの人で著しく減少するが、一部の人では安定したor増加したIgGレベルを維持する
- IgG産生を維持する人は
- 回復が早い傾向がある
- ウイルス特異的記憶B細胞で、抗体遺伝子の体細胞超変異が回復後の早い段階で増強されている
- CD4+ T細胞の活性化が持続する
※ 抗体遺伝子の体細胞超変異: 抗体遺伝子の可変部をコードする領域に変異を導入して抗体の高親和性化を目指す反応。変異はランダムに入るが抗原に親和性の高いものが優先的に選択される。
- Oude Munnink BB, et al. Transmission of SARS-CoV-2 on mink farms between humans and mink and back to humans. Science. 2020;eabe5901. doi:10.1126/science.abe5901
- オランダのSARS-CoV-2陽性ミンク農場16か所の住人・労働者・ミンクのウイルスゲノムを解析
- ウイルスは最初ヒトにより持ち込まれる
→初期の数週間はミンク間で蔓延→農場間で感染が広がりクラスター化→ミンク農場住人・労働者・接触者68%が感染
- ミンク農場住人・労働者・接触者が感染しているウイルスのゲノム配列はその農場のミンクと同じ系統
すなわち農場内でのミンク→ヒト感染
※ デンマークでもミンク農場でミンク→ヒト感染
Hammer AS, et al. SARS-CoV-2 Transmission between Mink (Neovison vison) and Humans, Denmark. Emerg Infect Dis. 2020;27(2):10.3201/eid2702.203794. doi:10.3201/eid2702.203794
- Mudd PA, et al. Distinct inflammatory profiles distinguish COVID-19 from influenza with limited contributions from cytokine storm. Sci Adv. 2020;eabe3024. doi:10.1126/sciadv.abe3024 PDFまだなし
- COVID-19およびインフルエンザ患者集団における免疫応答を比較
- サイトカインストーム症候群を示すサイトカインプロファイルをもつCOVID-19患者はごくわずか(168人中7人)
- COVID-19患者はインフルエンザ患者よりも低いサイトカインレベル
- IL-6、GCSF、IL-1RA、MCP1の増加はCOVID-19患者の急性呼吸不全による死亡を予測できるが、インフルエンザ患者より統計的に高くはない
- COVID-19患者はインフルエンザ患者よりも炎症の程度が低く、重要なのはインターフェロンシグナル伝達の著しい抑制
- Avanzini MA, et al. Human mesenchymal stromal cells do not express ACE2 and TMPRSS2 and are not permissive to SARS-CoV-2 infection. Stem Cells Transl Med. 2020;10.1002/sctm.20-0385. doi:10.1002/sctm.20-0385
- 羊膜・臍帯血・臍帯・脂肪組織・骨髄由来の間葉系幹細胞はACE2とTMPRSS2を発現していない
- SARS-CoV-2野生株に暴露しても細胞変性効果(感染の証拠) を示さない
- 間葉系幹細胞はSARS-CoV-2に感染性はなく細胞移植に用いても安全である
- Poole S, et al. SARS-CoV-2 has displaced other seasonal respiratory viruses: results from a prospective cohort study. J Infect. 2020;S0163-4453(20)30707-6. doi:10.1016/j.jinf.2020.11.010
- 季節性の呼吸器系ウイルス※のマルチプレックスPCR検査を3~5月に5年間にわたって受けてきた成人入院患者856人のデータを解析
- SARS-CoV-2以外の呼吸器系ウイルス検出率:
2020年以前54% (202/371) → 2020年4.1% (20/485)(p<0.0001).
- SARS-CoV-2の出現は、季節性呼吸器系ウイルス感染の劇的な減少と関連
- SARS-CoV-2は他の呼吸器系ウイルスと同時に検出されることは稀である
※ インフルエンザA, インフルエンザB, ヒトコロナウイルス (HKU1, NL63, 229E and OC43), ヒトライノウイルス, アデノウイルス, ヒトメタニューモウイルス, パラインフルエンザウイルス (1,2,3, and 4), RSウイルス
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Chang E, Kobayashi R, Fujihashi K, Komiya M, Kurita-Ochiai T. Impaired salivary SIgA antibodies elicit oral dysbiosis and subsequent induction of alveolar bone loss. Inflamm Res. 2020;10.1007/s00011-020-01418-x. doi:10.1007/s00011-020-01418-x 日本大学松戸歯学部
- IgA KOマウスと野生型マウスで唾液のマイクロバイオーム解析とメタボローム解析
- IgA KOマウスでは、
- Streptococcus属の相対量が顕著に減少
- Aggregatibacer属, Actinobacillus属, Prevotella属の相対量が増加
- 歯槽骨の退行、歯槽骨表面への破骨細胞の浸潤が有意に増大
- 炭素代謝・尿素サイクル・脂質代謝に関連する代謝産物に変化
- 唾液中の分泌型IgAは、正常口腔細菌叢の維持・制御、歯周病をの防止に重要